骨軟部腫瘍

整形外科領域の腫瘍性病変(骨軟部腫瘍)

四肢や体幹部の骨や軟部組織(筋肉、脂肪、神経や血管など)に発生した腫瘍性病変で、良性と悪性があります。骨軟部腫瘍は非常に稀ですが、種類が多く診断が難しい場合は少なくありません。治療については、そのまま経過観察してよいものもあれば、手術、場合によって抗腫瘍薬や放射線治療の併用が必要ものもあります。当院では、主に骨軟部腫瘍の診断およびセカンドオピニオンを行っておりますが、入院治療が必要な場合は、専門病院を紹介させていただきます。

良性骨腫瘍

【症状】良性骨腫瘍とは、骨に発生した腫瘍のうち、肺などの臓器に転移するなど生命に悪影響を及ぼすことがないものの総称です。骨軟骨腫、内軟骨腫などその種類は20種類以上あります。また、骨嚢腫などのように、本来腫瘍性病変ではないがその挙動が腫瘍に似ていることから腫瘍類似疾患として良性骨腫瘍に分類されるものもあります。

良性骨腫瘍は子供や若年者に多くみられ、膝や股関節周囲、手の骨に発生することが多く、運動や歩行時の痛みで気づいたり、骨の隆起や、骨折を生じて発見されたりすることもあります。痛みはほとんどが軽度で非進行性ですが、類骨腫のように夜間痛など強い痛みを伴うものもあります。

【病因】良性骨腫瘍の一部には遺伝するものがあることが知られており、特徴的な遺伝子の異常もみつかっていますが、多くの良性骨腫瘍の原因は未だわかっていません。

隆起した骨が運動の妨げになったり、腫瘍によって弱くなった骨に負担がかかることによって痛みを生じたりします。

【当院での治療】まず、レントゲン写真で骨が隆起していたり、ぬけて見えたりしていないか評価します。
必要に応じてCTやMRI、骨シンチグラフィーなどの検査を行います。良性骨腫瘍には多くの種類があり、特に治療を必要としないものから早期に専門的な治療が必要なものまでさまざまです。手術が必要な場合、専門病院で治療を受けていただきます。

②悪性骨腫瘍

【症状】悪性骨腫瘍には、原発性悪性骨腫瘍と転移性骨腫瘍があります。原発性悪性骨腫瘍はまれで主に10歳代などの若年者に発症します。代表的なものは骨肉腫やユーイング肉腫などがあります。転移性骨腫瘍や悪性骨腫瘍の大部分を占め、肺癌や乳癌の骨への転移がその代表です。各腫瘍に特有な症状はありませんが、けがをしないのに痛みや腫れが出現し、長く続いたりすることが多いようです。骨がもろくなり、骨折(病的骨折)して発見されることもあります。原発性悪性骨腫瘍は膝や股関節、肩などの近くに生じることが多いのですが、転移性骨腫瘍は脊椎や大腿骨でみられます。

【病因】原発性悪性骨腫瘍の多くは、原因がはっきりとわかっていません。一部の腫瘍では、その腫瘍に特異的な遺伝子の異常がわかっていて、機能解析をはじめ研究が進められています。遺伝子の異常といっても、ほとんどの場合、遺伝したりすることはありません。転移性骨腫瘍は、肺や消化器などの内臓の癌の腫瘍細胞が主として血液やリンパの流れを介して骨(骨髄)に運ばれること(転移)によって起こります。

【当院での治療】レントゲン、CTやMRIなどの画像診断を行い、悪性骨腫瘍を疑った場合、できるだけ早く受診できるように専門病院を紹介させていただきます。悪性骨腫瘍の治療は手術だけでなく、多くの場合、抗腫瘍薬による化学療法や放射線療法の併用が必要です。

③良性軟部腫瘍

【症状】四肢や体幹の「はれもの」や「できもの」として気づくことが多い。腫瘍が神経を圧迫している場合、しびれなどの症状がでます。真の腫瘍ではないが、類表皮嚢胞(粉瘤)や滑液包炎などの場合、痛みと伴うことがあります。血管腫も痛みを伴うことがあります。

【病因、病態】ガングリオン、類表皮嚢胞(粉瘤)や滑液包炎など、原因がはっきりしているものもありますが、ほとんどの腫瘍は原因がわかっていません。【当院での治療】レントゲンやMRIなどの画像検査を行います。良性であれば、経過観察か場合によって局所麻酔下で摘出します。悪性もしくは悪性の可能性がある場合、専門病院を紹介させていただきます。

④悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)

【症状】通常は無痛性の腫瘤ですが、深部に発生した場合、大きくなってから始めて気づくケースが多いです。神経の近くに発生したものや神経そのものに発生した場合、しびれや麻痺等の神経症状を伴うことがあります。

【病因、病態】原因がはっきりとわかっていません。一部の腫瘍では、その腫瘍に特異的な遺伝子の異常がわかっていて、機能解析をはじめ研究が進められています。遺伝子の異常といっても、ほとんどの場合、遺伝したりすることはありません。軟部肉腫の約40%は四肢、特に大腿部などの下肢に多く発生しますが、腫瘍の種類によって発生部位に特徴が見られます。脂肪肉腫や粘液線維肉腫は大腿部に、類上皮肉腫は前腕から手の浅層に多く発生します。好発年齢にも特徴があります。横紋筋肉腫、軟部発生ユーイング肉腫や胞巣状軟部肉腫は10~20歳代の若年者に、その他の軟部肉腫は中高年以降に発生する傾向があります。

【当院での治療】レントゲン、CTやMRIなどの画像診断を行い、悪性を疑った場合、できるだけ早く受診できるように専門病院を紹介させていただきます。軟部肉腫の治療の基本は手術による切除ですが、抗腫瘍薬による化学療法や放射線療法の併用が必要な場合もあります。